新卒で入った会社を辞めたときの話
私は、新卒で入社した会社を約2年で退職しました。
しかもその退職には「退職代行」を使いました。
この話をブログに書こうと思ったのは、同じように退職代行を使おうか迷っている人に、検討材料として私の経験を知ってもらいたいと思ったからです。
結論から言うと、会社を辞めたこと自体にはまったく後悔していません。
けれど、「退職代行を使ったこと」だけは、今でもずっと心に引っかかっています。
会社員時代、楽しかった
就活中、私は「営業職をやってみたい」と思っていました。
明確にやりたいことがなかった私にとって、福利厚生が手厚いという点も魅力に感じ、その会社への入社を決めました。
職場の雰囲気はとてもよく、上司や先輩方にも可愛がっていただいていました。
いわゆる風通しの良い職場、というのでしょうか。直属の上司ではない本部長クラスの方々とも、普段はあまり関わる機会はなかったものの、研修やイベントなどで顔を合わせた際には積極的に声をかけてくださり、仕事の悩みはないか、困っていることはないかと、よく気にかけていただいていました。
そして、自分で言うのもなんですが——お酒が好きな本部長からは、飲めない同期が多い中、私が比較的お酒に強くて陽気だったこともあって、いろいろな飲み会に頻繁に誘っていただくことが多かったです。
課長〜本部長クラスの飲み会に、新卒女子がひとりだけ参加する、なんて場面もよくありました。最初は「キャバクラの代わりか?」と思わなくもなかったですが、セクハラやアルハラのようなことは一切なく、皆さんが仕事の話をしている横で、私はひたすら美味しいごはんとお酒を楽しんでいるだけ。誘っていただくたびに、毎回ありがたく参加させてもらっていました。
今思い返せば、一度も誘いを断らなかった自分、なんだかんだ“かわいい新人”だったなぁと思います。(まあ、一人暮らしで食費を浮かせたいという理由もありましたが……)でも何より、毎回楽しかったから参加していた、というのが正直な気持ちです。
仕事そのものは、まだまだできないことばかりでしたが、そういった飲み会を通して名前を覚えてもらえることで、他の上司の方々にも目をかけていただく機会が増え、新卒の中でも新しいプロジェクトを任せていただくことが多く、周囲の期待を感じる場面もありました。
ただ一方で、扱う商材や業務内容に対しては、どうしても興味が持てないままでした。
退職を決意したきっかけは些細なこと
辞めたい気持ちは、ずっと前からありました。
周りの人たちは好きだけど、仕事そのものが好きではない。楽しいと思えない。
もちろん、誰もが好きな仕事をしているわけではないことは理解しています。
全員が商材に詳しくて、自信を持って営業しているわけでもなく、大多数の人が多少なりとも我慢しながら働いている。そんなことも、ちゃんとわかっていました。
それでも私は、「楽しい」「やりがいがある」と心から思える仕事をしたかった。何がやりたいかはわからなくても、「楽しくない」と感じながら続ける仕事に、自分の時間を使っていることがどうしても嫌だったんです。
そして、辞めたいと思いながら働き続けるという状況は、私にとって大きな矛盾であり、正直かなりしんどいことでした。
とはいえ、上司に「辞めたい」と伝えるのも嫌で……。気持ちは日に日に膨らんでいたものの、結局はそのまま、ずるずると働き続けていました。
そんなとき、決定打となったのが、お客さまから理不尽に怒られたことでした。
クレームの電話が終わり、営業車の中でひとり、「あ、もう辞めよう」と、ふと思ったんです。
その出来事自体が、死ぬほど辛かったわけではありません。営業職なら、よくあることだと思います。あくまで、きっかけにすぎませんでした。
そのときふと、以前同期と話していた「退職代行」のことを思い出しました。
そして、なんとなく費用を調べてみたら、約3万円ほどだったんです。
ここで言う“たった”というのは、金額が安いという意味ではなく、「この金額で、嫌なことから逃げられるのなら安い」と感じた、私なりの“たった”でした。
そして、その決意をした月の月末に、実際に退職代行を使って辞めました。
退職代行を使った理由:言うのが怖かった
退職代行を使うことを選んだ、いちばんの理由。
それは、「自分の口で辞めることを伝えるのが、怖かったから」です。
いつ、どのタイミングで切り出せばいいのかも分からない。
どう伝えれば角が立たないのか、そもそも何をどう言えばいいのかも分からなかった。
周囲からどう思われるのかが不安で、「あの子、辞めるんだ」と白い目で見られるんじゃないか、そんな想像ばかりしていました。
何より、上司や先輩たちから本当によくしてもらっていた分、申し訳なさや罪悪感が強くて、正面から向き合う勇気がどうしても持てなかったんです。
「辞める」と伝えたとき、きっと聞かれるであろう「このあとどうするの?」という質問にも、自信を持って答えられるわけではありませんでした。
ただ、「今の仕事がどうしても好きになれない」「このまま続けていきたいとは思えない」——それだけが、はっきりとした気持ちでした。
だけど、その“ただ嫌だ”という理由だけでは、辞めることすら正当化できないような気がして。
当時の私はただ嫌なことから目をそらして逃げたい、その一心でした。
会社にいる間に、誰かから「裏切られた」と思われるのが怖かったし、陰で何か言われるのも正直、耐えられなかった。
本音を言えば、楽をしたかったんです。
辛い思いをしてまで、自分の弱さに真正面から向き合う勇気もなくて——ただその場から離れることばかりを考えていました。
退職代行を使ったのは、自分の弱さを守るためじゃなく、その弱さから目をそらしたまま、逃げ切ってしまった結果だったと思います。
退職代行の流れと対応
出勤最終日に、会社用携帯やその他の会社の備品はすべて置いて帰りました。
そして月の最終日に有給をもらって会社を休み、その日に退職代行から会社に連絡をしてもらいました。
その後は、すべて退職代行の方が対応してくれました。
私は会社に保険証を郵送したくらいで、他は特に何もしませんでした。
会社側も退職代行の対応には慣れていたようで、スムーズに退職は完了しました。
退職後の気持ち:開放感、そして後悔
辞めた直後は、「もう会社に行かなくていいんだ」という、それだけの開放感に包まれていました。
ただ、それはほんの一瞬のことでした。
時間が経つにつれて、私の中には大きな後悔がどんどん膨らんでいきました。
今でも一番後悔しているのは、「何も言えなかったこと」です。
お世話になった上司や先輩たちに、感謝の気持ちも、お礼の言葉も何一つ伝えられないまま、突然姿を消すように辞めてしまった自分。
ただ「辞めたい」という感情だけを優先して、向き合うことから逃げた自分。
そのことが、本当に申し訳なくて、苦しくて、正直、自分自身を責める気持ちから今も完全には抜け出せていません。
今思えば、どんな反応をされようと、自分の口でちゃんと伝えればよかったんだと思います。
きっと引き止められただろうけど、それでも最終的に自分で決めたことなら、きっとあの人たちは応援してくれたんじゃないか。そう思うことがあります。
もちろん、それはただの想像に過ぎません。でも、そう思わずにはいられないんです。
あのとき、逃げなければよかった。
3年経った今でも、ふとした瞬間に何度も、何度も、そう思います。
これから退職代行を使おうとしている人へ
私は、退職代行というサービスそのものを否定するつもりはありません。
実際、ブラックな環境で退職を認めてもらえなかったり、心身の限界を迎えている人にとって、それは本当に必要な、救いの手だと思います。
でも、当時の私のように——環境に明確な問題があったわけでもなく、ただ「言うのが怖い」「嫌なことから逃げたい」という一時の感情だけで選んでしまうと、その後に押し寄せる後悔の重さに、自分自身が苦しむことになるかもしれません。
私は、自分で伝えることから逃げました。
向き合わなければいけない気持ちにも、信頼していた人たちにも、自分自身にも。
その選択をした自分を、今でも許しきれずにいます。
退職代行を使うことは悪ではありません。
けれど、使う前に一度だけ、自分の本当の気持ちにちゃんと向き合ってみてください。
逃げるのか、踏ん張るのか。
「怖い」や「嫌だ」だけではなく、その先に後悔しない自分がいるかどうかを、どうか立ち止まって考えてみてほしいです。
あのときの私には、それができませんでした。
あなたが選ぶ道が、どうか後悔の少ないものでありますように。
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